読む前に:旧王国の悪魔が帝国に侵入しようとするのを頑張って防ぐアズリア隊長。
圧倒的な力の差に押されてしまう帝国軍。撤収も已む無しかと思われたその時。
颯爽と降り立った一人の青年。その正体は…!(ベタ)

そんなトコから始まります。フリーダム創作ですみません。
時間軸的にはサモ2第23話「傀儡戦争」です。多分。誰かリィンバウムの地理を教えてプリーズ!








ヒ ー ロ ー は 遅 れ て や っ て く る 





「助太刀するよ、隊長さん。」

戦場でも和やかな声が頬を掠める。


振り向かなくても分かる。
こんなにも柔らかく、暖かで、優しい声を、アズリアはひとつしか知らない。


最前列の彼女の横を、赤いシルエットのその人は駆け抜ける。
目の前に広がる悪魔の軍勢のその混沌とした雰囲気に息を飲むが、こちらに向かってくるのを確認すると、一気に握った剣を振り下ろした。

近くで拳を振っていたギャレオもアズリアの方の様子に気付いて駆け寄ってくる。
「アズリア隊長!…これは、一体…!」
他の隊員達もイレギュラーな彼の登場に戸惑っているようだった。
白が基調である帝国軍の制服の中で、赤を纏っている彼はよく目立っている。

だが、一番混乱しているのは、他でもないアズリアだった。

「…レックス」

先日見た夢が、フラッシュバックする。
通い慣れていた校舎、そこに差し込む光、怒鳴り声、微笑み。


それらを愛しいと思う心。
一体どうして、こんな場所に…?
剣を振るう彼に詰め寄って、全部吐かせたい。

―しかし、そんな感傷や焦燥・驚きに浸る時間などありはしない。
悪意に身を染めた悪魔達は、休むことなく帝国の領地へと歩を進めているのだ。
今、自分がすべきこと。
それを見失っては隊長として失格だ。すべて終わりだ。

「ギャレオ、コイツのことは後だ!とにかく悪魔を帝国に入れないことを最優先に考えろ。
 それが任務だ!
 帝国は私たちが守るんだぞ!!」
「…はっ!」


キリのない戦いに、疲れがあったのは自覚していた。
しかし、こんなイレギュラーひとつで隊の士気が緩んでしまうのは遺憾だった。
そう、彼が自分の戦場に突然表れるくらいのことで。

ぎっ、と奥歯を噛み締め、再びアズリアは最前列へ躍り出た。
彼の背中に自分の背を軽く当て、後方に居る部下達を見据えた。
大きく息を吸う。

「怪我をした者は悪化する前に退け!体制を保つことを考えろ!
 戦える者は心を折るな!迷えば剣に出るぞ!
 総員、全力で戦え!我々が帝国を守る!!」

彼らを鼓舞するために愛剣を天高く突き上げる。
それに続くように、部下達の吼える声が聞こえた。



戦場の空気が変わった。
軍人達の剣の切っ先にまで心が籠められているようだった。
その熱気は、歓声となってアズリアにまで届く。
何て、心強い。


そして同時に、背中に感じる体温も思い出した。
安心しきって後ろを任せてしまった。
何年も会っていないのに、いきなり自分の身を任せるのは軽率だったのかもしれないが、
現在彼の身体にも彼女の身体にも傷がついていないということは、その信頼は間違ったものではないことを裏付けている。

襲い来る悪魔を討ち倒しながら、そっと後ろを確認する。



あの頃と変わらない、まっすぐな剣筋だった。
重たい大剣を使っているのに、その重さを感じさせないようなステップで斬り込んで行く。
力の動きの流れを的確に知っている、彼らしい戦い方だった。

変わっていない。変っていないからこそ、思いは強くなる。
本当は、こんな場所に居ていい人ではない。

「お前は何しに来た!?」
「え?えーとっ…助っ人!」
「い・ら・んっ!!」
「酷いなぁアズリア!」

軽口を叩くのも、前と一緒だ。
その緊張感の無さは、本当に何とかした方が良いと思う。
しかもこんな所で。以前よりもむしろ酷くなている気がする。

二人で会話をする間でも、全身を休ませることなく動いていた。
アズリアの隙をレックスがフォローし、レックスの取りこぼしをアズリアが始末する。
その連携は極自然なものであり、近くで剣を振るう部下達も目を見張らせた。
しかし、そんな空気をよそに、二人は言葉を重ねていく。


「帝国が危ないって聞いてさ、いてもたってもいられなくて!」
「まったくお前は…っ!私の隊だから良かったものの!」
「あ、君の隊だから来たんだよ?」


ザクッ!

肉を断つ音と、悪魔の咆哮が徐々に減っていく。
上がった士気は下がることなく勢いを増していっていた。


「隊長、もう一息です!」
近くで部下が、自身に気合を入れるように叫んだ。
アズリアは大きく頷き、再び声を張った。
「皆、気を抜くな!最後が肝心だか…」
「アズリア隊長!あれを…!!」
部下に発破を掛ける言葉は、副官のギャレオに向かって遮られる。
指差す方向に目をやると、黒く蠢く悪魔達が、再び大地に降りようとする光景が目に入った。

「……これが、悪魔の力…
 こんな姑息な手を使うなど、旧王国も地に落ちたか…!」


『帝国・聖王国同時に始められた旧王国の侵攻を阻止せよ』と軍本部からは通達があった。
しかし真実は人間対悪魔との、存亡を賭けた戦いであったのだが、彼女がそれを知るのはこの戦争が終わってからの事。
今はただ、目の前の状況に追いつくだけで精一杯だった。


敵側の増強を歯痒く見つめているアズリアの横で、レックスはそっと持っていた剣を鞘に戻し、降ろした。
小さく深呼吸をして、しっかり前を見据える。
「レックス…!?」
彼の変化に気付き、振り向いたアズリアは目を見張った。
揺るがずに前だけに目線を送る彼へ、微かな蒼い光が纏わり始める。
その気配は、酷く懐かしかった。

まさか、再びこの目で見ることになるとは。

しかし、それは彼女の望むものではない。
「やめろ!それは、許さない!」
「…この状況を破るには、剣を抜くしかない。」

掴みかかって制止するアズリアを見下ろす蒼い瞳は厳しい。
彼がそんな瞳を湛えると、梃子でも動かないことをアズリアはよく学んでいた。
しかし、だからと言って黙って見送ることも出来ない。

「こんな島から離れた場所で無茶だ…!
 というか、こんな場所で抜いて後がどうなるか!」

抜剣する力は、島の境界線から得ているものだ。
境界線が何らかのダメージを受けていれば、全力では戦えない。
島の集落を統べる能力高き護人達も、島から離れてしまうと無力に等しくなる。
当然、島から遠く離れた聖王国国境の地では、力も存分に出せないだろう。

そして、今の周辺の状況。
アズリアの部下とはいえ、事情も知らない普通の人間。
剣を抜いた彼の姿は神々しくありながらもまた、畏怖の対象へとなりかねない。
簡単に言えば『化け物』じみてもいるのだ。
最悪、召還獣扱いされてしまうのかもしれない。


不確定な要素ばかりが思いつくなかでは、アズリアでもレックスをフォローしきれない。
彼女は恐れていた。自分の引き受けた戦闘の中で、彼が傷つくことを。

けれど、

「大切なものを守るのに、無茶とか無理とか後のこととか考えられない!
 俺は、俺の出来ることをする。
 この剣の力は、守るために生み出されたものだ!」
「…!」

不安を唱える彼女の言葉を打ち破るのもまた、彼。

目を閉じ浅く呼吸をして集中すると、纏っていた光は収縮して、彼の手元に伸びていく。
澄んだ泉のように光るその剣が、アズリアの瞳を眩く差す。
光が一瞬強まり、辺りを爆発的に照らす。

「…くっ!」

眩しさで閉じた瞳をゆっくり開くとそこには、蒼を湛えたレックスがいた。
白く長く伸びた髪の毛、オーラが具現化したような光輪、
そして、右手に絡まる一振りの剣。


「……ウィスタリアス…」
『果て無き蒼』と、彼は呼んでいた。占い師に名づけられたものらしい。
その名に相応しく、剣はどこまでも深く澄み、辺りを照らしていた。

部下の様子をうかがうと、皆呆然とレックスの姿を眺めていた。
当然のことだろう。人智を超える出来事が、敵の襲来も含めて起きているのだから。
敵側の悪魔も、突如表れた存在に対応しきれず、二の足を踏んでいる。

―抜いてしまったものは、仕方がない。

そっと溜息をついて、アズリアは彼の隣へ並び立った。


「敵に隙があるのは今のうちだ。…いけるか?」
「うん。島から離れてて、正直言えば力は足りないんだけど。
 でも、きっと大丈夫だよ。」

髪の毛の変化で多少印象は違うが、確かに彼のままである笑みで剣をかかげた。


「アズリアが、一緒だから。」



+++++++++++++++++++++++++
そんな夢を見ています。
本気書き殴り申し訳ないです……orz
まだまだ続くよ!レクアズ的にはこれからダ★(爽)

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送